都市と大地、その可能態

日本建築学会建築歴史・意匠委員会大会研究協議会,日本建築学会,2019

大地とは何か。それは、人がよってたつ物質的・精神的基盤である。居住や建設の基礎であり、構築素材の源であり、製造や経済、社会を駆動するエネルギーの採取場である。加えて、あらゆる生命体が生きる現場であり、外延としては地球全体である。
ヒトが大地に棲み着き、そこへ住み継ぐには、持続的な生存環境の構築が必要であった。大地に広がる人文的領域は、その格闘の歴史を示す。
このような人文的領域に、都市は、人類の諸活動のネットワークにおける結節点としてあらわれた。都市はそれ単独では成立しない。そこは、大地からもたらされた様々な物質が交換され、社会的・工学的・芸術的手続きを経て再配置される場である。また、文明はその営みを通じてこそ形成される。
都市の成立は大地抜きには語れず、都市文明は大地から自立できない。大災害は、文明が大地との結び着きを理解しない時に発生する。
世界史の段階を都市と大地からみれば、次のような見通しも描けよう。すなわち、古代や中世には大地の領土化がはかられ、その特異点に(原)都市が発生した。近世には、ほぼ人のみにとって有益な大地の利用や所有の状態すなわち大地の土地化が広がり、近代にはかつてない速さと規模で同現象が拡大した。現代はそのさらなる拡張の只中にある。大地の土地化は人間史に並行して進み、いまその究極的局面を迎えている。
本シンポジウムでは大地を介して都市から建築までを捉え直す。都市-建築-大地の関係史について議論し、これからの可能態を展望したい。〔松田法子〕

日時:2019年9月5日(木)14:45-17:30
場所:金沢工業大学 23号館 330室

司会:松田法子(京都府立大学 副司会:松本裕(大阪産業大学)
記録:中尾俊介(横浜国立大学)

プログラム:
1 主旨説明
 松田法子(前掲) 都市と大地、その可能態
2 報告
 伊藤 毅 (青山学院大学) 領域史のなかの都市
 青井 哲人(明治大学)   大地、移動、領域化 –台湾濁水渓流域研究と福島アトラスから
 中谷 礼仁(早稲田大学)  古・原生代のBuildinghood –19世紀末稠密高層都市誕生の原理+
 伊藤 孝 (茨城大学)   地球科学的な時間・空間スケールから考える都市
 白井 秀和(福井大学)   西洋建築史・建築論における大地 –啓蒙主義と自然概念からの考察
 森 俊偉 (金沢工業大学) 乾燥の大地 チュニジアのイスラム空間 -アラブとベルベルの混融と集落
3 討論  大地を介して考える都市の可能態
4 総括 

参加費:日本建築学会会員は大会参加費を支払う/一般市民無料
当日資料:有償頒布 申込:不要