解説
土地の〈いま〉の光景を記録・記憶するひとつの方法として、家の「色」に注目した記録を行い、作品化します。
このプロジェクトは、浦ごとに個性的な生活文化と生活空間が展開してきた紀伊半島の海付集落から始まります。
「色見本帳」として持ち運び可能な風景のかけらは、集落の〈いま〉をさまざまな土地に伝えます。
民家がまとう「色」は、それぞれに家の歴史と時間を吸いこんでいます。
それらの「色」は、塗り立ての輝く色とは、もう同じではありません。
海風や雨、太陽にさらされて、変化した色、いろ。
住み手や職人は、どんな気持ちでその色を選んだのでしょうか。
集落の路地を行き交う日常のまなざしのなかにちらちらと華やぎ、移ろう色たち。
そういう小さな意味と時間を宿した色を集めます。
作品化によって、見慣れた日常風景の価値への気づきや、さらなる記録・活動をひろげるきっかけになることも目指しています。
制作概要
主に民家の外壁を構成する色と素材を写真記録し、画像には共通の基準による色補正を施した上で、それらを1面各1枚のカラーシートとします。
各シートには集落の空間構成と民家立地のトポグラフィ分析から選ばれた記号が付されています。
色見本帳の最初の配列はこのトポグラフィにもとづくものです。鑑賞者は各自の主観(色や素材など)によって自由にシートを並べ替えて楽しむことができます。
企画・製作:松田法子+京都府立大学生活文化・生活美学研究室 制作:小川智彦
参考作品:小川智彦「風景の色見本帳」シリーズ(各地の空や海、風景の日の出から日の入りまでの色の移り変わりを「色見本帳」に仕立てた作品)
学生担当者:安田春香(2019年)
これまでの作品
※色見本帳裁断製本前のデータシートより抜粋
「三木浦の色見本帳 2019年11月17日と18日」
「太地の色見本帳 2019年11月16日」