絵はがきの別府

古城俊秀コレクションより

概要

本書は、大分県別府市の温泉場である別府温泉を写した、明治末期から昭和初期の写真絵はがきを素材にする。
別府は、温泉場と温泉関連業を基盤にして明治期には空間的にも社会的にも大幅な拡大を遂げ、国内最大の温泉町に成長した特異な都市である。本書では、このような特徴をもつ別府を対象に、その歴史上の多様な姿を写し取って各地へ流通させた写真絵はがきを、別府の都市史と共に追いかけてみたい。(「はじめに」より)

目次

はじめに 写真絵はがきと別府

第一章 渚と泉
1 渚のある温泉町 的ヶ浜—別府イメージの生成と写真絵はがき
2 港町別府 大阪商船と別府の近代
3 海水浴と砂湯 別府の天然砂湯

第二章 大別府
4 別府の古層別府と火山、火山神/別府と沿海諸地域/災厄の記憶
5 別府八湯 浜脇 殷賑の温泉場/朝見 八幡宮の門前町/観海寺 眺望と高燥の地/堀田 街道の分岐点/明礬 生産の温泉場/鉄輪 古式を伝える温泉場/柴石 醍醐天皇と後冷泉天皇の入湯伝/亀川 街道筋の温泉場/高原 〈別府〉のひろがり
6 町並み 町並みの地勢
7 共同温泉浴場 温泉町のインフラストラクチャー
8 温泉源開発 湯脈の上の都市
9 旅館海岸通/港町・竹瓦/埋立地/駅前/流川/豊前道/田の湯・上田の湯/不老町/濱脇/ホテル/観海寺/鉄輪/亀川/明礬/柴石

第三章 別府とその世紀
10 温泉町の博覧会 ふたつの大イベント
11 遊園地 少女歌劇とケーブルカー
12 公園
13 別府の土地開発 海岸線の変貌と土地会社
14 軍の療養地「無敵艦隊大歓迎」/傷病兵と別府
15 水際の遊廓
16 芸妓と料亭
17 電車と汽車別府の電気鉄道/別府と汽車
18 創られる名所
19 地獄 江戸時代の地獄/地獄の近代
20 自動車 地獄めぐりと自動車/拡大する別府観光圏
21 飛行艇 広がりゆく別府のイメージ

コラム 別府港のパノラマ絵はがき/写真絵はがきの製作発行者/旅館業の社会と空間/相場師と観光 油屋熊八伝再考
付録 さまざまな絵はがき 封緘絵はがき/パノラマ絵はがき/イラスト・絵画の絵はがき/別府の郵便・郵便局/記念絵はがき・記念スタンプ・記念切手
   絵はがき製作年代の見方
おわりに
参考文献/索引

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